前回のあらすじ
最終回となる第3回では、物語の「快楽の深み」と「心の救済」が重なり合い、タカヤが完全に虜になる姿と、母乳風俗という“異世界”の魔力を、官能的かつ文学的に描いている。。。
――三度目の訪問だった。
扉を開けた瞬間、もう躊躇いはなかった。
受付嬢の顔さえ見ず、「ひなたで」とだけ呟いた。
身体が、脳が、心が――
すでに彼女を求めていた。
「いらっしゃい、タカヤさん……今日も、たっぷり出るよ」
和室の中に香る、かすかに甘い母乳の匂い。
ひなたは、何も身に纏っていなかった。
「今日は、特別なミルク……用意してあるの」
彼女は自分の乳房を、両手で包みこむように持ち上げた。
その乳首から、白く滴るもの――
「搾って冷蔵しておいたの。今夜は、味比べ」
奥の冷蔵庫から取り出されたのは、
ガラス瓶に詰められた純白の液体だった。
“昨日の私”と“今の私”。
それを、利き酒のように味わう時間。
タカヤは、無言でコップを口に運んだ。
常温に近い乳白色の液体は、舌の上でとろけ、
まるでデザートワインのように喉奥を滑っていった。
「……これが、“母乳”か」
「うん。“あなたのためだけ”に出したのよ」
彼女はそう言って、自らの乳首を口元へ押しつけてきた。
「もっと……もっと、ちょうだい」
「ふふ、欲しがりさん……でも、いい子ね。
いっぱい吸って、私のこと、もっと深く知って……」
タカヤの手は、乳房の柔らかさに溺れ、
唇はその温もりに夢中だった。
頭の中に、母親の面影が一瞬よぎったが――
それすらも、乳の甘さに塗りつぶされた。
「タカヤさん……中にも、入りたい?」
彼女の言葉に、彼はわずかに頷いた。
乳を吸うことが“始まり”ならば、
肉体を重ねることは“儀式”のようなものだった。
滑らかに濡れた彼女の奥は、
想像を超えるほどに温かく、柔らかく、
吸い寄せられるように包み込んできた。
「中も……いっぱい出して。中に、欲しいの」
もう、ただの行為ではなかった。
交わりの一つひとつに、
彼女の“命”が込められているようにさえ感じた。
「……なんで、こんなに惹かれるんだろうな」
絶頂の余韻の中で、彼はぽつりと呟いた。
「それはね……お母さんの記憶に近いからよ」
ひなたは、微笑んだ。
「誰だって、最初に口にしたのは“母乳”でしょう?
無意識のうちに、それを求めてるの。
……愛された記憶、許された時間。
ミルクには、その全部が溶け込んでるのよ」
彼女の言葉が、静かに胸に刺さった。
「……じゃあ俺は、ずっとそれを探してたのかもしれないな」
「そう。ここに来た人は、みんなそう。
タカヤさんは、やっと“帰ってこれた”んだよ」
その言葉に、彼の瞳がかすかに潤んだ。
数日後――
会社の会議室で、タカヤは何気ない表情で資料を配っていた。
だがネクタイの奥に隠された彼の胸には、
“あの時間”だけが刻み込まれていた。
夜になれば、また扉を開く。
ミルクの匂い、優しい手、甘い液体。
そのすべてが、彼の生きる理由になっていた。
この世界のどこかに、
“本物の女”が、静かに待っている。
それを知ってしまった男にとって、
もう、普通の女では足りない。
あなたもきっと、まだ知らない。
“出る女”がくれる、本当の癒しを。
(完)